胃の痛み、その原因とは
胃痛は一般的な症状のひとつです。多くの方は胃を休めることで、すぐに症状が改善されるでしょう。
しかし、数日間胃痛が続いたり、再び痛みが起こったり、吐き気や胸やけなどの症状が現れたりする場合、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどを発症している可能性があります。
また、食べ過ぎ・飲み過ぎ、生活習慣の乱れ、ピロリ菌感染なども原因となることがよくあります。特にピロリ菌感染は、胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃がんなどの発症リスクを高める要因です。検査で陽性だった場合、除菌治療が必要です。
胃痛とは
胃は他の消化器官と同じように、脳と常に連絡を取り合いながら働いています。この連絡を担うのが自律神経です。
しかし、ストレスや生活習慣の乱れ、睡眠不足などによって自律神経のバランスが崩れると、消化器全体の機能が低下し、消化液の過剰分泌などが引き起こされます。胃の場合、胃酸の過剰分泌や血行障害が起こり、胃痛などの症状が現れます。
また、ピロリ菌感染によって粘膜に炎症が生じることで、胃痛が引き起こされることもあります。
胃痛の症状チェック
胃痛の症状はさまざまです。診察時には、患者さんが感じている具体的な症状についてできるだけ詳しく教えてください。
- 食べ物を摂ると痛む
- 食後に痛みを感じる
- お腹が空いている時に痛む
- 夜中や明け方に痛くなる
- 下腹部と胃が痛む
- ストレスを感じた時に痛む
- 薬を飲んだら痛む
- 何日も続く軽い胃痛がある
- 痛みが一度引いてから繰り返されることがよくある
- 発熱や吐き気など他の症状も伴う
胃痛をともなう病気
逆流性食道炎
胃酸が何度も逆流する原因として、胃酸の過剰分泌、腹圧の上昇、加齢による下部食道括約筋（食道下部に存在し、食事の際のみ緩む筋肉）の緩みが挙げられます。
胃の痛みや胃もたれ、胸やけ、吐き気、呑酸、喉の痛み、焼けるような感覚が現れることがあります。
機能性ディスペプシア
胃カメラ検査で異常が発見されないにもかかわらず、胃やみぞおちの痛み、胃もたれ、早期満腹感などの症状が現れる状態です。適切な治療により、症状が改善する可能性があります。
食道がん
飲酒や喫煙は、食道がんの主な原因とされています。「お腹が痛いと思っていたら食道がんだった」というケースもあります。その他の症状としては、食べ物を飲み込みにくい感覚や、喉の痛み・違和感、咳、声が枯れるといったものが挙げられます。
急性胃炎
暴飲暴食やストレスなどにより、急性の胃の炎症が起こります。 胃やみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐、胃のムカムカ感、食欲不振、発熱などの症状が現れます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
長期的なピロリ菌感染や消炎鎮痛剤の長期服用が主な原因とされています。
主な症状としては、胃やみぞおちの痛み、腹痛、胸やけ、吐き気、食欲減退、体重減少、ゲップなどが挙げられます。進行すると、吐血や黒色便が見られることもあります。胃潰瘍の場合は食後や食事中に痛みが起こり、十二指腸潰瘍の場合は空腹時に痛みが現れる傾向があります。
胃がん
長期的なピロリ菌感染、塩分の過剰摂取、喫煙などが原因とされています。
初期段階では症状がほとんど現れませんが、ある程度進行した後に胃やみぞおちの痛み、胃の不快感、胸やけ、胃もたれなどの症状が現れます。出血を引き起こす場合には、吐血、貧血、黒色便が見られることもあります。
慢性胃炎・萎縮性胃炎
長期的なピロリ菌感染により胃炎が慢性化したものです。胃粘膜が萎縮した胃炎は、萎縮性胃炎と呼ばれます。
主な症状としては、胃痛、胃のムカムカ感、吐き気、胸やけ、食欲不振、そしてお腹の張りなどがあります。
胆のう炎・胆管炎
胆汁が胆のうから十二指腸へ移動する経路で、結石などによる障害が生じると胆のう炎が引き起こされます。右上腹部から背中にかけての痛みが特徴的であり、胃痛と勘違いされることもあります。その他には、吐き気や嘔吐、発熱などの症状が現れます。また、胆管で細菌感染が発生する疾患を胆管炎と呼びます。この場合も、右上腹部の痛みが認められ、発熱や黄疸などの症状が現れます。
胃痛の検査・診断
これまで述べてきたように、胃痛を伴う疾患はさまざまです。症状、食生活、服用している薬、既往歴などについて詳しくお聞きした後、患者様に適した検査方法を提案いたします。
腹部エコー検査（超音波検査）
肝臓、膵臓、胆嚢などの消化器の状態を超音波で調べる検査方法です。放射線被ばくや痛みはなく、妊婦や子供でも安心して受けていただけます。
血液検査
全身の血液を調べ、感染や炎症の有無、内分泌の状態などを確認する検査です。また、腫瘍マーカーを調べることも可能です。
胃カメラ検査
食道や胃、十二指腸の粘膜を内視鏡で観察する検査です。がんなどの病変を早期に発見するのに非常に有効です。必要に応じて組織の採取や病理検査、ピロリ菌検査を行うこともあります。当院では鎮静剤を使用し、苦痛や恐怖感を最小限に抑えた胃カメラ検査を提供しております。内視鏡専門医・指導医による高精度な検査を受けていただけます。
胃痛の治療
主に以下の治療法があります。胃痛の原因となる疾患が特定された場合は、それに応じた治療をおこないます。
生活習慣の見直し
食事や飲酒、喫煙といった習慣は胃に大きな影響を与えます。改善すべき習慣があれば、医師がそれに対するアドバイスを行います。また、十分な休養や睡眠をとること、ストレスを上手に発散させること、規則正しい生活を送ること、適度な運動を行うことも心がけましょう。
内服薬
胃の状態や症状を考慮し、胃酸の分泌を抑える薬、粘膜を保護する薬、蠕動運動を調整する薬などを使用します。また、ストレスなど精神的な要因が関与している場合、抗うつ薬や精神安定剤が処方されることもあります。
漢方薬
西洋薬をできるだけ使いたくない方や、副作用を最小限に抑えたい方、体質改善を目指す方に推奨されます。患者様の症状や体質、性別、体格、体力などに合わせて漢方薬の処方調整を行います。
急な胃痛を軽減・対処法
胃を休める
胃を休めることは多くの胃痛に有効です。胃に余計な負担をかけず、消化の良い食べ物を摂取するか、断食を行います。ただし、脱水を防ぐため、経口補水液やスポーツドリンクをこまめに摂取してください。脂肪分が多い食べ物や刺激物、アルコール、カフェインなどは控えましょう。
市販薬を使用する
胃痛を和らげるために市販薬を使用することができます。ただし、この方法は受診できない場合の一時的な対策と考えてください。あくまでも一時しのぎの対処法であり、その後は時間を作って根本的な解決策を見つけるために医療機関を受診することをお勧めします。
消化器内科を受診する
胃の不調を感じた場合、消化器内科を受診することが重要です。医師による診療や検査、診断を受けることで、原因を特定できます。正確な診断が行われることで、適切な治療が提供されます。胃痛やその他の症状でお悩みの際は、内視鏡検査やピロリ菌検査を実施する消化器内科に相談しましょう。
