吐き気、嘔吐について
吐き気や胸の不快感など、身体に違和感を覚える症状がある場合、一般的には消化器疾患が原因と考えられます。当院では、専門の消化器内科医が、症状が消化器疾患に起因するものか、または他の疾患によるものかを診断します。
吐き気・嘔吐の原因
中枢神経が刺激されて生じる吐き気や、各臓器が刺激されることによって引き起こされる吐き気・嘔吐があります。また、高カルシウム血症や治療薬の副作用、妊娠初期のつわりなど、様々な原因も考えられます。以下は、吐き気や嘔吐を引き起こす代表的な疾患です。
吐き気を感じる中枢を刺激する嘔吐
薬の副作用 他の病気の治療に使われるお薬で、ときどき吐き気や嘔吐が出ることがあります。具体的には、心不全の治療に使うジキタリス製剤、気管支を広げるテオフィリン薬、貧血の治療に使う造血促進剤、抗がん剤やオピオイドなどの医療用麻薬が原因となることがあります。
ストレスによる精神的嘔吐 ストレスや過労で自律神経のバランスが崩れ、脳を刺激して吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。
脳疾患による嘔吐
くも膜下出血
くも膜の内側の動脈が破れてくも膜下腔に出血が生じる疾患で、急激な頭痛や吐き気、嘔吐が現れ、意識消失の危険があります。
脳出血
脳の細い動脈が破れ、激しい頭痛や吐き気、手足の麻痺などが現れます。
脳腫瘍
腫瘍の位置によって、頭痛や吐き気、嘔吐が生じることがあり、言語障害や視野障害を引き起こすこともあります。
食中毒
海外での生水摂取やフグの食あたり、魚介類に感染したノロウイルス、生肉にいるO157（病原性大腸菌）などで食中毒を引き起こすことがあります。吐き気や嘔吐に加えて、強い腹痛・胃痛が伴い、発熱は少なくても38度ほどの軽度なことが多いです。
各臓器が刺激されて出る嘔吐
急性胃炎
急性胃炎では、胸やけやむかつき、膨満感、不快感、胃痛、みぞおち周辺の痛み、下血などの症状が現れます。胃は強い酸性の胃酸を分泌し、通常は粘液で保護されています。しかし、何らかの理由でこの防御メカニズムが機能しなくなったり、多量のアルコールや食べ物、刺激物を摂取すると、炎症が引き起こされ、急性胃炎となります。放置すると胃粘膜の回復力が低下し、胃液の分泌が減少し、胃潰瘍へ移行する恐れもあります。胃カメラによって、より正確に診断を行うことが可能です。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が局所的に深く傷つく疾患で、主な原因はピロリ菌や非ステロイド性鎮痛剤（NSAIDs）などです。また、ストレスも誘発因子となります。胃潰瘍では、食事中から少し時間が経過した後にみぞおち周辺に重く圧迫感のある痛みが生じます。十二指腸潰瘍では、早朝や空腹時にみぞおち周辺がシクシクと痛み、食事を摂ることで痛みが和らぐ傾向があります。どちらの場合も、胃もたれや吐き気、食欲不振、黒色便などの症状が現れることがあります。胃カメラを受けることで、診断が可能です。
胃がん
進行すると吐き気や腹痛などの症状が現れますが、近年では胃カメラの性能向上により、初期段階で胃がんを発見できるようになりました。早期発見ができれば、内視鏡治療で完治する可能性もあります。胃がんはピロリ菌と密接に関連しており、ピロリ菌に感染している場合、過去に除菌治療を受けた場合でも、定期的に胃カメラ検査を受けることをお勧めします。
虫垂炎
盲腸の始まりの部分にある虫垂（盲腸）に炎症が生じる疾患です。急にみぞおちや臍（へその周辺）が痛み出し、次第に右下腹部に痛みが移動するのが特徴です。主な症状として、吐き気や嘔吐、発熱が挙げられます。放置すると深刻な腹膜炎に進展する恐れがあります。発症は、10代〜30代に多く、暴飲暴食や過労、ストレスが原因とされています。
腸閉塞
腸に腫瘍や機能障害、捻転などが生じて腸が詰まり、内容物が正常に運ばれない状態です。便やガスが蓄積されることで、便秘にはじまり腹痛や腹部膨満感、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。
腹膜炎
内臓を覆う腹膜が細菌感染して炎症を引き起こす疾患で、急性虫垂炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどによって胃や腸に穴が開いたり、腸閉塞によって組織が壊死することで発症します。吐き気や嘔吐に加え、腹痛、発熱、呼吸困難などの症状が現れます。適切な処置を受けないと、最悪の場合命に関わる可能性がある病気です。
メニエール病
メニエール病の原因はまだ十分に解明されていませんが、内耳にあるリンパ液が過剰に増加し、内耳を圧迫して発作を引き起こすと考えられています。吐き気や嘔吐をはじめ、めまいの発作、片耳の難聴、耳鳴りなどの症状が見られます。放置すると難聴や耳鳴りが進行する恐れがあります。
吐き気、嘔吐が起こる病気の治療法
吐き気や嘔吐は、様々な要因によって生じます。症状や過去の健康状態、服用薬、食事内容などを問診でお伺いしながら、血液検査や腹部エコー、胃カメラなどを行い、原因を特定していきます。疾患が消化器や内科治療で改善できる場合は、それに合った治療を実施します。その他の原因となる疾患がある場合には、専門の医療機関への紹介を行います。
