胃潰瘍とは
胃潰瘍とは、胃の内側の粘膜が深く傷ついた状態を指します。胃の壁は「粘膜層」「粘膜下層」「筋層」「漿膜」といった層でできていますが、このうち粘膜下層より深く傷が達したものが潰瘍です。浅い傷（粘膜層まで）は「びらん」と呼ばれます。
胃潰瘍になると、みぞおちの痛みや空腹時の痛み、吐き気、食欲低下などの症状が現れることがあります。
胃潰瘍の原因
通常、胃の中では強い胃酸や消化酵素（ペプシン）によって食べ物が分解されます。一方で、胃の内側にはそれらから粘膜を守る胃粘液の防御機能があり、バランスを保っています。
しかし、このバランスが崩れると、胃酸などが胃壁を傷つけて潰瘍ができてしまいます。
ピロリ菌感染
ピロリ菌は胃粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、潰瘍をつくりやすくします。
薬の影響（NSAIDsやステロイド）
痛み止めや抗炎症薬の一部は、胃の保護機能を弱め、潰瘍の原因となります。
ストレスや生活習慣
精神的ストレス、辛い食べ物、アルコールの過剰摂取、喫煙、カフェインの摂りすぎも、胃の粘膜に負担をかけます。
胃潰瘍の症状
胃潰瘍では、みぞおち（鳩尾）の痛みが主な症状です。痛み方は人によって異なり、「キリキリ」「ズキズキ」「鈍い痛み」など様々です。ただし、痛みの強さ＝潰瘍の重症度とは限りません。
その他の症状として、
- 吐き気・嘔吐
- げっぷや呑酸（すっぱいげっぷ）
- 食欲不振
- 黒い便（タール便）や吐血
潰瘍が血管を傷つけた場合に起こります。 - 貧血
出血が続くことで、血液の量が減少します。
胃潰瘍の痛みは、食後に強くなる傾向があります。
胃潰瘍の診断
胃潰瘍は胃がんとの区別が重要なため、確定診断には胃カメラ検査（内視鏡）が行われます。検査では以下を確認します。
- 潰瘍の位置や大きさ、深さ
- 周囲の粘膜の細胞を採取し、がんの有無を病理検査
- 出血がある場合は止血処置
- ピロリ菌感染の有無
- 必要に応じて、血液検査で貧血などの確認
胃潰瘍の治療
治療は薬物療法が中心です。
主な治療薬
胃酸分泌抑制薬（PPI、H2ブロッカーなど）
胃酸の分泌を抑え、潰瘍の回復を促します。
胃粘膜保護薬
胃の内側を守り、治癒を助けます。
原因に応じた治療
ピロリ菌感染がある場合は、症状が落ち着いてから除菌治療を行います。
薬が原因の場合、服用中止や薬の変更を検討します。
潰瘍が深く、胃に穴が開く（穿孔）などの重症例では、手術が必要となることもあります。早期の診断と治療が大切です。
