逆流性食道炎のセルフチェック
以下のような症状がある場合、逆流性食道炎の可能性があります
- 胸やけがする
- 胸がむかむかする
- 前かがみになると胸やけが悪化する
- 酸っぱいものが込み上げてくる
- お腹が張っている感じがする
- 胃もたれがある
- 喉がヒリヒリする違和感
- 食べ物が喉や胸につかえる感じがする
- げっぷが頻繁に出る
- 咳や声のかすれ
症状に心当たりのある方は、医療機関での診察をおすすめします。
逆流性食道炎になりやすい方
逆流性食道炎は、食生活や生活習慣、姿勢、体型などが関係して発症することがあります。
リスクが高まる食事・生活習慣
- 便秘がちである
- 早食いの傾向がある
- 食べ物をよく噛まずに飲み込む
- 喫煙習慣がある
- アルコールを過度に摂取する
- 暴飲暴食する、または食後すぐに横になることが多い
リスクの高まる姿勢や体型の特徴
- 庭仕事やデスクワークなどで長時間前かがみの姿勢をとる
- 腹部を締め付けるような服装やベルトをよく着けている
- 肥満傾向がある
- 妊娠中である
- 加齢により猫背になっている
逆流性食道炎について
かつては日本での発症率が比較的低かった逆流性食道炎ですが、近年では患者数が増加しています。その背景には、食の欧米化や高脂肪食の摂取増加などが関与していると考えられています。
本来、食道は胃酸に触れることがない構造ですが、何らかの原因で胃酸が逆流すると、粘膜に炎症やただれが生じ、胸やけなどの不快な症状が出現します。
なお、胃酸の逆流により症状があっても、内視鏡でびらんや潰瘍が確認されないケースでは、「非びらん性胃食道逆流症（NERD）」と診断されます。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎は、主に胃酸の過剰分泌や、食道への逆流を防ぐ機能（下部食道括約筋の働き）の低下によって引き起こされます。以下のような要因が重なることで、発症のリスクが高まります。
- 慢性的なストレス
- 食べすぎや早食い
- 過度の飲酒
- 喫煙習慣
- 肥満による腹部への圧迫
- 猫背や加齢による姿勢の変化
- 胃の手術後に起こる胆汁の逆流
- 食道裂孔ヘルニア（胃の一部が食道側へ突出する状態）
逆流性食道炎の検査方法
逆流性食道炎の診断には、まず自覚症状の確認が重要です。症状の内容と頻度をもとに、必要に応じて胃カメラ検査（上部消化管内視鏡検査）を行います。
当院では、BLIモード（Blue Laser Imaging）を搭載した内視鏡を導入しており、粘膜の色調変化や微細な炎症も正確に観察できます。これにより、早期の段階でも見逃すことなく診断が可能です。
逆流性食道炎と合併症
逆流性食道炎が慢性化すると、以下のような合併症を引き起こすことがあります。
バレット食道
長期間にわたり胃酸が食道へ逆流すると、食道粘膜の一部が円柱上皮（胃粘膜に似た細胞）に置き換わることがあります。これをバレット食道と呼び、食道腺がんのリスク因子として知られています。早期発見と経過観察が重要です。
睡眠障害
横になることで胃酸が逆流しやすくなり、夜間の胸やけや不快感によって入眠困難や中途覚醒が生じることがあります。睡眠の質が低下すると、日中のパフォーマンスにも影響が及ぶため、適切な治療が求められます。
逆流性食道炎とストレスについて
ストレスが溜まり、自律神経のバランスが乱れると、胃酸の分泌が過剰になり、逆流性食道炎を引き起こす原因になります。また、ストレスは逆流性食道炎だけでなく、胃潰瘍や過敏性腸症候群（IBS）など、他の消化器疾患にも深く関与しています。
日頃から趣味や運動、リラックスできる時間を持ち、ストレスを上手に発散することが、発症予防・再発予防に役立ちます。
逆流性食道炎と喫煙・飲酒との関係
喫煙の影響
たばこに含まれるニコチンには、胃酸の分泌を促進する作用があります。胃酸が増えることで逆流のリスクが高まり、食道に炎症を起こしやすくなります。また、喫煙により唾液の分泌量が減少し、胃酸による食道へのダメージを緩和する自然な防御機能が低下してしまいます。
飲酒の影響
アルコールは、胃酸の逆流を防ぐ役割を持つ下部食道括約筋（LES）の働きを弱めるため、逆流が起こりやすくなります。さらに、食道の蠕動運動も低下し、胃酸が食道に長くとどまりやすくなります。炭酸飲料も胃内の圧力を高め、逆流を引き起こす原因になります。
治療法とお薬について
薬物療法
症状の程度に応じて、次のようなお薬を使用します。
胃酸分泌抑制薬（PPIやH2ブロッカー）
胃酸の分泌を抑え、炎症を鎮めます
消化管運動機能改善薬
食道や胃の運動を改善し、胃の内容物がスムーズに流れるようにします
粘膜保護薬
胃酸から食道粘膜を保護し、修復を助けます
生活習慣・食習慣の見直し
お薬だけでは再発リスクは残ります。根本的な改善には、生活や食事の見直しが欠かせません。
- 高脂肪食や刺激物（辛い物、アルコール、コーヒー、炭酸など）を控える
- 食後すぐに横にならない（2時間は空ける）
- 腹部を締め付ける服やベルトを避ける
逆流性食道炎の予防と食事のポイント
生活習慣の工夫
前かがみの姿勢は腹部を圧迫しやすいので、デスクワークや庭仕事の際にはこまめに休憩を取りましょう。
締め付けの強い衣類は避けましょう。ベルトや補正下着なども影響することがあります。
就寝時は左側を下にし、上半身を少し高くして寝ると、胃酸の逆流が起こりにくくなります。
食習慣の見直し
- 脂肪分の多い食事は控える
- 刺激物（辛い物、酸味の強い物、カフェイン、アルコール）は避ける
- 禁煙と節酒を心がける
- 夕食は就寝の4時間以上前に済ませる
- ビタミンU（キャベツ、レタス、アスパラガス、ブロッコリー、トマトなど）を含む野菜は、胃酸分泌を抑制し粘膜の修復に役立ちます
食後のチューイングガム
食後にキシリトール入りのガムを噛むと唾液の分泌が促進され、胃酸の中和や洗い流し効果が期待できます。虫歯予防にもなるため、習慣化をおすすめします。
