インフルエンザ
インフルエンザウイルス感染症は、一般的に「インフルエンザ」と呼ばれ、A型、B型、C型、D型の4つのウイルスによって引き起こされます。人間に感染するのは、A型、B型、C型の3つであり、D型は家畜に限られます。
A型インフルエンザウイルス
激しい発熱や筋肉痛などの症状を引き起こします。144種の亜型があり、変化が激しいため、免疫獲得が難しく、毎年A型インフルエンザにかかるケースもあります。
B型インフルエンザウイルス
A型と比較して症状は軽いことが多いですが、下痢などの胃腸症状が目立ちます。比較的変化が少なく、一度感染すると免疫ができ、再感染しにくくなります。しかし、変化が起きることもあり、複数回感染する可能性もあります。
C型インフルエンザウイルス
多くの方が自覚しないうちにかかっているインフルエンザウイルスです。通常は4～6歳の子供に感染し、鼻水など軽い症状が現れます。一度感染すると免疫が得られ、その後は風邪程度の症状しか現れなくなります。
A型は通常、シーズン初めの11月から12月にかけて流行し、B型はシーズン終盤の1月から3月にかけて流行します。時には、A型とB型の両方に同時に感染することもあります。
インフルエンザの症状
C型インフルエンザに感染する場合、ほとんど症状は現れません。ここでは、A型やB型のインフルエンザの症状について紹介します。
A型インフルエンザの症状
- 高熱(38℃以上)
- 頭痛や筋肉痛・関節痛がある
- 咳・喉の痛み
- くしゃみ・鼻水が出る
- 寒気を感じる
A型インフルエンザの最も特徴的な点は、急速に発生する高熱です。一般的な風邪は徐々に進行しますが、インフルエンザは高熱が急速に現れます。また、風邪では咳や鼻水などの上気道症状が最初に現れるのに対し、インフルエンザでは発熱や全身の痛み、悪寒が先に現れます。
インフルエンザの症状が疑われる場合は、早めに医師の診察を受けましょう。
B型インフルエンザの症状
- 発熱(37℃台)
- 頭痛や筋肉痛・関節痛
- 下痢・腹痛
- 咳やくしゃみ・鼻水
B型インフルエンザの症状はA型よりも軽度で、下痢などの消化器症状が目立ちます。お腹の風邪（ウイルス性胃腸炎）と似た症状が現れますが、下痢が長期間（3日以上）続くことや、全身の痛みが特徴的です。症状は軽いものの、インフルエンザであることに変わりはありません。早めの受診が重要です。
インフルエンザになるとどうなる
健康な方がインフルエンザにかかっても、ほとんどの場合は1週間ほどで回復します。しかし、子供や高齢者、免疫力が低下している方々は、重症化するリスクがあるため、発症時には特に注意が必要です。
【インフルエンザの合併症】
インフルエンザ脳炎
1〜5歳の乳幼児に多く、発熱から1〜2日で発症することがほとんどです。脳の浮腫や脳圧の増加により、痙攣や意識障害が生じることがあります。最悪の場合、脳障害や多臓器不全を引き起こすこともあります。
乳幼児がインフルエンザを発症した場合は、保護者が痙攣や意識障害の有無を注意深く観察しましょう。急に怖がる、暴れるなどの一時的な異常行動は、乳幼児の発熱時にはよく見られます。しかし、異常行動が続く場合には受診を検討してください。
ごく稀にですが、窓から飛び降りるなどの異常行動が報告されています。保護者の皆様はお子さまを常に見守りましょう。
二次性細菌性肺炎
インフルエンザ感染後、免疫力が低下すると細菌感染による肺炎を引き起こすことがあります。この病気は免疫力が弱い65歳以上の高齢者に多く見られます。高齢者のインフルエンザ発症率は若い方よりも高いですが、死亡率は高くありません。
リスクの高い高齢者は、予防接種を通じてインフルエンザウイルス感染を防ぐことが望ましいです。また、糖尿病や呼吸器・循環器・腎臓・肝臓の疾患を抱える方もインフルエンザの重症化リスクが高いため、予防を徹底しましょう。
インフルエンザになりやすい方
インフルエンザの発症率は5〜9歳が最も高く、次いで10〜14歳となっています。このように、幼稚園児や小中学生は発症リスクが高いことがわかります。子供同士の接触が頻繁にあるため、インフルエンザを発症しやすくなります。
幼稚園児や小中学生の保護者は、予防接種を受けさせ、手洗いやうがい、マスク着用などを徹底させましょう。免疫力が低下している方もインフルエンザの発症リスクが高いため、以下のような方は予防に努めましょう。
【免疫力が低下している方の例】
- 高齢者（65歳以上）
- 糖尿病の患者様
- HIVなど免疫低下を伴う病気の方
- 妊娠中の方
- 化学療法を受けている方
- ストレスが溜まっている方
- 食習慣が乱れている方
- 飲酒・喫煙が多い方
- 睡眠不足や疲労が蓄積している方
- 運動量が不足している方
上記に該当しなくても、インフルエンザに感染する可能性は依然として高いです。季節性インフルエンザが流行する時期には、自身の健康管理に細心の注意を払い、インフルエンザの症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診してください。
インフルエンザの予防方法
インフルエンザを予防する最も重要な方法は予防接種です。インフルエンザワクチンの有効性について疑問を持たれることもありますが、その心配は不要です。
確かに、予防接種の効果は100%ではなく、予防率は約50～70%程度です。これは毎年のウイルスの変異に応じて変動します。しかし、未接種と比較して、症状が軽減される例が大多数を占めています。接種した方は高熱が出にくくなる傾向にあり、予防接種を受けなかった場合は高熱が2回起こるリスクが高いとされています。
予防接種を受けると、2回目の高熱が軽減する傾向が見られます。インフルエンザワクチンの効果は接種後約4週間かかるため、流行が始まる1ヶ月以上前の10月末～11月頃に接種することが望ましいです。ただし、ワクチンの効果は100%得られるわけではないため、生活習慣からも予防に努めましょう。
栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、疲労の蓄積を防ぐことが重要です。過度な飲酒や喫煙を避け、適度な運動を心がけましょう。流行時にはマスクを着用し、外出後は手洗いやうがいを欠かさず行いましょう。
インフルエンザの治療方法
インフルエンザ治療は、生活療法と薬物療法に分かれます。
インフルエンザの一般療法(生活療法)
免疫力でウイルスと戦うため、休養が重要です。できるだけ安静を保ち、十分な睡眠を取るようにしましょう。発熱時は水分補給をこまめに行い、経口補水液やスポーツドリンクが推奨されます。
食事は無理に摂取する必要はありませんが、栄養補給をすると回復がスムーズになります。アイスクリームやプリンなど、消化が良く食べやすい食べ物を摂りましょう。
インフルエンザの薬物療法
発症から48時間以内であれば、抗インフルエンザ薬による改善が期待できます。薬を服用することで、ウイルスの増殖を防ぐことができます。
【抗インフルエンザ薬】
- ノイラミニダーゼ阻害薬(タミフルやリレンザなど)
- キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬(ゾフルーザ)
過去には、抗インフルエンザ薬を服用した子供の異常行動が問題視されました。しかし、インフルエンザに罹患した際の異常行動は、薬の服用に関係なく発生することがあるため、未成年者がインフルエンザに感染した場合は、保護者が注意深く見守ることが重要です。
また、症状に応じて以下の対症療法薬が使用されます。
- 解熱鎮痛薬
- 咳止め薬
- 去痰薬
インフルエンザが治まっても、しばらくの間は、体内からウイルスが排出されます。解熱した後でも、2日間は外出を避けてください。
